日本臨床外科学会雑誌
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転移性肝癌との鑑別が困難であった肝硬化性血管腫の1切除例
森川 充洋石田 誠飯田 敦片山 寛次山口 明夫今村 好章
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2005 年 66 巻 7 号 p. 1698-1702

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抄録

症例は64歳,男性.検診を契機に前立腺癌と診断され,他臓器スクリーニングの腹部CTにて肝内腫瘤を指摘され紹介された.腹部超音波検査では腫瘤陰影を指摘できず,単純CTでは右肝静脈周囲に不整形の低吸収域として捉えられた.経時的造影CTおよび血管造影では腫瘤辺縁よりゆっくりと内部が造影されたが,海綿状血管腫と転移性肝癌との鑑別は困難であった. MRIでも血管腫に特異的な所見は得られず,悪性腫瘍を否定できず,肝右葉切除を施行した.腫瘍は肝実質とは境界明瞭な5×3cmの充実白色調で,右肝静脈に接して存在していた.組織学的には硝子化を伴う線維組織内に血管腔が散在し,硬化性血管腫と診断された.この腫瘍の画像診断における造影効果は,広範な線維組織の血行動態を反映するため,線維化の著明な悪性腫瘍との鑑別が困難である.比較的頻度の高い肝血管腫のvariantとして本腫瘍の存在に留意すべきであると考えられた.

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