2005 年 66 巻 8 号 p. 1895-1898
症例は66歳,女性.既往歴として58歳時よりパーキンソン病にて通院治療中. 5カ月前転倒にて左肋骨骨折の加療を行った.今回,パーキンソン病の病状悪化にて入院加療中,腹痛を訴え腹部単純X線写真でイレウスと診断された.その後,胸部単純X線写真にて横隔膜の挙上,胸腔内に大腸ガスと思われるairが認められた.左横隔膜ヘルニアの診断にて,開腹にて手術を施行した.開腹すると,左横隔膜に径約5cmのヘルニア門を認め,大網,横行結腸が貫通しており,嵌頓していた.腸切除を行わず,横隔膜欠損部を結節縫合閉鎖した.本症例を通じ,胸腹部外傷既往のある患者に対しては,遅発性外傷性横隔膜ヘルニアが発生することも考慮しなければならないと痛感させられた.