日本臨床外科学会雑誌
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回腸穿孔を初発症状としたCrohn病の1例
塩入 利一濱邊 祐一北村 正次
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2005 年 66 巻 8 号 p. 1940-1944

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抄録

症例は33歳の女性で,下腹部痛を主訴に近医を受診し,腹膜炎の疑いで当院を紹介受診した.腹部膨満および中下腹部に圧痛・筋性防御・反跳痛があり, CT検査で腹部全体に腹水が存在し,下腹部の小腸に拡張と壁肥厚がみられた.汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.ループ状に癒着・拡張した回腸の腸間膜付着側に穿孔がみられ,穿孔部を含む癒着した回腸を部分切除・端々吻合した.切除標本では線状・島状の潰瘍形成および瘻孔形成がみられ,病理所見では腸管の全層性の炎症細胞浸潤および間質の浮腫・線維化および類上皮性肉芽腫・多核巨細胞を認め, Crohn病と診断した. Crohn病は,腸管穿孔,大量出血,腸閉塞,中毒性巨大結腸症,膿瘍,痔瘻などに対し外科的治療が適応となる.穿孔で発症したCrohn病は稀であるが,穿孔性腹膜炎の鑑別疾患の1つとして重要である.

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