2005 年 66 巻 8 号 p. 1980-1984
乳癌の臓器転移は多様であるが消化管,特に大腸への転移は稀である.われわれは腋窩リンパ節転移陰性(病期IIA) の乳癌の根治術後早期に,大腸への転移がみつかった1例を経験したので報告する.症例は77歳,女性.右側乳癌にて治癒切除術施行.術後約7カ月に定期検査のため腹部CT検査を行ったところ,大動脈周囲リンパ節の腫大を認めた.まもなく,左頸部リンパ節が急速に増大してきたため,切除生検したところ癌の転移であった.原発の検索のため精査を行った結果,大腸内視鏡にてS状結腸に隆起性病変を認め,生検では悪性と診断された.原発性大腸癌の疑いで腹腔鏡補助下S状結腸切除術を施行したが,摘出標本の病理組織像で乳癌の大腸転移と判明した.