2006 年 67 巻 1 号 p. 23-27
症例は56歳,女性.検診で甲状腺腫瘍を指摘され精査目的で当院を受診した.超音波検査にて甲状腺右葉下極に径約10mm大で辺縁不整,境界不明瞭,内部不均一な低エコーを呈する充実性腫瘤を認めた.精査の結果,甲状腺癌と診断し甲状腺亜全摘術およびリンパ節郭清術を施行した.病理組織学的検査では,間質にアミロイド沈着を伴い充実性に増殖する髄様癌の組織に混在してコロイドを含んだ大小さまざまな瀘胞構造を認めた.さらに免疫組織化学的検査において,カルシトニン,サイログロプリンの両者が陽性であり混合性髄様・瀘胞細胞癌と診断した.混合性髄様・瀘胞細胞癌は本邦では10例が報告されている稀な甲状腺腫瘍であり,文献的考察を加えて報告した.