抄録
症例は77歳の女性. 2002年夏より頸部腫瘤の増大を訴え,近医受診.精査にて甲状腺乳頭癌と診断された.当科での術前CT, MRIで甲状腺左葉に10×9.5×6.5cm大の腫瘍と左内頸静脈内に腫瘍塞栓を認めた.術中所見では5cm大の左内頸静脈内腫瘍塞栓を認め,甲状腺全摘術と左内頸静脈の合併切除を施行し,肉眼的には癌の遺残を認めなかった.
甲状腺分化癌は一般的に予後良好な腫瘍であるが,局所浸潤をきたす症例は比較的予後不良であるとされる.内頸静脈浸潤を伴った甲状腺分化癌の外科的治療は,現在まで数症例でその有用性が報告されている.特に肉眼的に腫瘍を摘出しうることが重要であるとされる.
本症例は肉眼的腫瘍の遺残なく,手術を施行し,術後TSH抑制療法にて経過観察中である.本人の希望により131I内照射療法は施行されていないが,術後現在まで28カ月間,再発を認めない.