67 巻 (2006) 4 号 p. 908-914
滑膜肉腫は四肢大関節近傍に好発する病変であり,その発育は比較的緩徐とされている.今回われわれは,非常に稀な腹壁原発滑膜肉腫の急速な増大により,腎不全,呼吸不全,肝機能障害をきたした,いわゆるabdominal compartment syndromeを呈した病例に対し,腫瘍切除減圧を行い救命しえた.病例は36歳,男性.約40cm大の巨大腹部腫瘤,両肺結節影の精査を目的として2004年12月に入院となった.生検など行うも確定診断には至らず,腫瘍の急速な増大により腹部膨満感,肝腎機能障害,呼吸不全が進行した.保存的治療は限界と判断され, 2005年1月に腫瘍切除術が実施され,腫瘍は病理組織学的に腹壁原発滑膜肉腫と診断された.術後,多臓器不全は劇的に改善し,遺残腫瘍に対する化学療法を施行しつつ,術後11カ月現在,外来通院で経過観察されている.