日本臨床外科学会雑誌
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制御不能の消化管出血を主体とした結節性多発動脈炎の1例
斎藤 健一郎黒川 勝天谷 奨芝原 一繁八木 真悟長谷川 洋
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2006 年 67 巻 9 号 p. 2091-2096

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抄録

症例は65歳,男性.腹部膨満感,嘔気を主訴に受診した.上部消化管内視鏡で十二指腸下行脚より肛門側に連続するびらん,潰瘍,出血を認めた.腹部CTでは広範囲の小腸炎を認めた.十二指腸粘膜からの生検では特異的な所見は認めず,診断確定には至らなかった.保存的加療を行うも2度の大量下血を認め, 3度目の大量下血の際に血管造影検査を施行し,回結腸動脈の回腸末梢枝からの出血を確認しえたためTAEを施行した.しかし4度目の下血を生じたため同部回腸の部分切除を施行した.切除標本にて中~小動脈を主体の壊死性血管炎を認め,結節性多発動脈炎の診断を得た.ステロイドパルス療法を開始し,併発した腎不全にはCHDFを行い治療したが,下血は治まらず,入院36日目(術後11日目)に永眠された.治療抵抗性の出血性腸炎に遭遇した場合,結節性多発動脈炎などの血管炎の可能性を念頭におき,より早期の診断および治療が肝要と考えられた.

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