1992 年 33 巻 9 号 p. 1151-1157
骨髄腫(MM)患者の貧血に対するエリスロポエチン(Epo)の関与を検討するため,MM患者53例と,対照として正常人および再生不良性貧血(AA)患者などの他の血液疾患患者の血清Epo濃度をラジオイムノアッセイにより測定した。MM患者の血清Epo濃度は72.0±94.4 mIU/ml (mean±SD)で,正常人(24.1±6.1 mIU/ml)と比較すると有意に高値であったが,AA患者(7069.9±9406 mIU/ml)よりは低値であった。また,MM患者の血清Epo濃度の対数値はHb値と有意な負の相関(r=-0.543, p<0.05)を示し,腎障害のないMM患者ではさらに負の相関(r=-0.636, p<0.05)が強くなった。このことは,腎障害のあるMM患者ではEpo産生が低下していることを意味し,Epoの補充療法が貧血の改善に有効と考えられた。MM患者血清Epo濃度の日内変動は,正常人と同様に朝低く夜高いパターンを示した。また,MM患者における化学療法後の血清Epo濃度の変動はHb値と関係がなく,一過性に上昇し,その後低下した。