臨床血液
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臨床研究
ITPにおける抗核抗体の臨床的意義
倉田 義之宮川 幸子小杉 智柏木 浩和本田 繁則水谷 肇冨山 佳昭金山 良男松沢 佑次
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1992 年 33 巻 9 号 p. 1178-1182

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抄録

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)患者血清中にしばしば検出される抗核抗体(ANA)の臨床的意義につき検討した。対象は,当院で既に平均5.5年経過観察中のITP 55例である。ANA陽性を23例に認めた。ANA陽性例の過半数の症例で抗体価は320倍以上と高値であった。ANAの陽性,陰性あるいはANA抗体価と血小板数間には関連を認めなかった。ANA陽性23例中10例に沈降性抗ENA抗体を認めた。抗SS-A抗体陽性例が7例,抗nuclear RNP抗体陽性例が3例であった。抗SS-A抗体を認めた7症例の血小板数は抗SS-A抗体陰性症例の血小板数に比べ低値の傾向を示した。これら抗SS-Aまたは抗nuclear RNP沈降抗体を認めた10例は平均8.1年間経過観察しているが未だSLEを発症していない。これらの事実はANA抗体価高値ITP症例あるいは抗SS-A抗体陽性ITP症例は経過中に必ずしもSLEを発症するとは限らない事を意味するとともにこれらのマーカーでもってSLEを発症し易いハイリスク群を予見することは困難であると思われた。

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© 1992 一般社団法人 日本血液学会
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