2009 年 50 巻 8 号 p. 652-657
伝染性単核球症は,通常Epstein-Barr (EB)ウイルス(EBV)により引き起こされる疾患と考えられているが,サイトメガロウイルス(CMV)やhuman immunodeficiency virus-1 (HIV-1)などでも同様の症状を引き起こすことが知られている。
CMVの初感染はEBVに比べて不顕性に終わることが多く,特に健常者では感染が重篤となることは非常に稀である。今回我々は,健常成人に持続する発熱,全身倦怠感,著明な末梢血白血球増多を伴ったCMVによる伝染性単核球症を経験した。49歳,男性。発熱,全身倦怠感にて発症。末梢血に異型リンパ球(CD8陽性T細胞)の著明な増多,およびT細胞受容体の単クローン性遺伝子再構成が認められた。しかしガンシクロビルの投与後すみやかに症状は改善し,異型リンパ球や遺伝子再構成も消失した。これらの現象は腫瘍性ではなくCMVの初感染による免疫反応であることが推察されるが,今後も注意深く経過観察する必要がある。