2015 年 56 巻 12 号 p. 2426-2433
静止期にある造血幹細胞はストレスによって失われにくい反面,DNA修復エラーによる遺伝子変異をきたしやすい。しかし造血幹細胞が変異の蓄積を防ぐ仕組みは明らかでない。造血幹細胞はアポトーシス抑制性Bcl-2を高発現し細胞死を防いでいるが,DNA損傷下ではp53を活性化し積極的にアポトーシスシグナルを誘導する。筆者らはp53のアポトーシス促進分子Aspp1が造血幹細胞に高発現し,p53と協調して造血幹細胞プールの健全性維持に貢献することを明らかにした。本稿では造血幹細胞におけるアポトーシス制御とp53の役割について概説したのち,Aspp1がp53と協調して造血幹細胞の自己複製,DNA損傷および腫瘍化を制御する仕組みを紹介する。