2015 年 56 巻 12 号 p. 2434-2440
ダウン症候群児はGATA1の遺伝子異常により,新生児期に約10%で一過性骨髄異常増殖症(TAM)を発症し,うち約20%がのちに急性白血病(ML-DS)を発症する。我々は異種移植によりTAMモデルマウスを作製し,白血病進展機序の解明を試みた。患者TAM細胞をNOGマウスに移植し,11例中3例の検体で生着を確認した。生着した症例について2次移植を施行したところ,生着した3例のうち1例で継代移植が可能であり,マウス内TAM由来細胞において,初発TAM患者検体には見られなかったDNAコピー数異常やGATA1遺伝子異常が観察され,これらの異常を有するクローンが,もともとのTAM患者検体の中にマイナークローンとして存在していることを証明した。また本症例は後に実際にML-DSを発症した。本モデルの解析により,白血病発生の初期段階に起こるクローン選択が,白血病進展において重要である可能性が示唆された。