2015 年 56 巻 6 号 p. 657-665
骨髄系腫瘍では,TET2を始めとするエピジェネティクス制御分子に高頻度に変異が生じている。TET2は5-methylcytosineから脱メチル化に必須の中間産物である5-hydroxymethylcytosine (5-hmC)への変換を触媒する酵素である。我々はgene trap法により作製されたTET2ノックダウンマウスを用いてTET2不全のin vivo表現型を解析した。このマウスでは,骨髄細胞ゲノムDNA中の5-hmC量が減少していた。TET2不全マウスは生後早期に死亡し,TET2が生存に重要な遺伝子を制御している可能性が示唆された。造血系ではTET2不全マウスの胎児肝由来血液細胞を移植したマウスは,軽度の骨髄系細胞の増加や髄外造血を認めたが,致死的腫瘍の発症は認めなかった。一方,コロニー継代実験や野生型細胞との競合・継代移植実験ではTET2不全造血幹細胞の自己複製能亢進が示唆された。