2015 年 56 巻 7 号 p. 795-806
細血管障害性溶血性貧血(MAHA)は,播種性血管内凝固症候群(DIC)や血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)や溶血性尿毒症症候群(HUS)などで認められる病態である。“血小板血栓”によるMAHAは,しばしば血小板減少と臓器障害(特に腎や脳)を伴っており,このような3徴候を示す病理学的診断名を血栓性微小血管症(TMA)と称している。TMAの代表的疾患はTTPとHUSであるが,その他に妊娠,感染症,薬剤,造血幹細胞移植後,自己免疫疾患,悪性腫瘍などにおいてもTMAを発症することがあり,二次性TMAとして分類される。近年TTPやHUSの病態解明により,診断や治療法は飛躍的に進歩した。一方,二次性TMAの病態は依然として不明な場合が多く,有用な治療法も少なく予後も不良である。TTP治療におけるリツキシマブの位置づけ,脳症発症のSTEC-HUSの治療法,aHUS治療におけるエクリズマブの有効性と安全性の確認,二次性TMAの病態解明および治療成績の向上,などが今後の課題であろう。