2015 年 56 巻 8 号 p. 1045-1052
イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)の変異はAMLやグリオーマを始め,様々ながんで生じている。野生型IDHはα-KGという代謝物を産生しているが,変異型IDHは新たな機能を獲得してα-KGから2-HGというがん代謝物を産生するようになる。2-HGはTETやヒストン脱メチル化酵素等の様々な二原子酸素添加酵素を阻害することによりがん化に寄与している。そして2-HGは正常な細胞には不要であるために,変異型IDHに対する阻害剤は副作用のない抗がん剤となることが期待されている。我々のグループは変異型IDH依存的にAMLを発症するモデルマウスを作成し,このマウスからloxp配列を用いて変異型IDHを除去することによる影響を調べた。その結果,白血病幹細胞性が失われてマウスの生存期間が著しく伸びることが明らかになった。この結果は,変異型IDHは治療標的にふさわしい因子であることを強く示唆している。