2017 年 58 巻 7 号 p. 776-786
次世代シークエンス技術により骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome, MDS)の診断や予後予測に有用な遺伝学的異常が明らかとなってきた。しかし,多数症例で100以上の遺伝子を対象とした網羅的解析に関する研究はごく少数であり,本報ではこれらの報告1)に基づいて,遺伝学的異常とMDSの分子メカニズムとの関連について概説する。我々の報告では944例のMDS患者,既知の104遺伝子を対象に標的ディープシークエンス技術を用い変異・欠失を解析した。845例(89.5%)に遺伝子変異を認め,47遺伝子が有意に変異していた。このうち14遺伝子と臨床的な予後予測因子を組み合わせることで新たな予後予測モデルが構築可能となった。異なるコホートで同様の報告が検証されており,今後臨床現場において遺伝学的異常がさらに重要な指標となることが期待される。