臨床血液
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Symposium 7
遺伝性血栓性素因の診断と治療
森下 英理子
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2017 年 58 巻 7 号 p. 866-874

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抄録

遺伝性血栓性素因としては,凝固阻止因子アンチトロンビン(AT)・プロテインC(PC)・プロテインS(PS)の欠乏症,活性化プロテインC抵抗性(凝固第V因子異常症),AT抵抗性(プロトロンビン異常症)などがあり,静脈血栓塞栓症の重要な危険因子となる。これらの疾患は若年時より繰り返して血栓症を発症するため,正確に診断し再発予防に努めたり,家系調査による保因者の血栓予防を行うことが大切である。AT・PC・PS欠乏症の3つの疾患は,「特発性血栓症(遺伝性血栓性素因によるものに限る)」という疾患名で本年4月から指定難病として取り扱われるようになった。診断に際しては,後天性に活性が低下する病態を除外することが重要である。また,確定診断のために遺伝子解析を実施するが,現時点での解析法では変異が同定できない症例も多数認め(特にPS欠乏症),今後次世代シークエンス法を用いた変異同定率の向上を期待したい。

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© 2017 一般社団法人 日本血液学会
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