2018 年 59 巻 10 号 p. 1861-1871
造血幹細胞(HSC)の生物学は,造血幹細胞移植や基礎研究において重要なトピックである。哺乳類(マウスおよびヒトを含む)において最も未分化なHSCは,長い間CD34抗原陽性と信じられてきた。しかしながら,Nakauchiらによりマウスの長期造血再構築能を持つHSCが,CD34抗原陰性(CD34−)KSL細胞であることが示された。我々は,骨髄内直接移植法を用いて,ヒト臍帯血(CB)中に非常に未分化なCD34−HSCが存在することを明らかにした。一連の研究により,CD34−HSCがヒトHSCの階層制上で頂点に位置する未分化なHSCであることを提唱してきた。最近,独自に同定した2つの陽性/濃縮マーカーであるCD133抗原とGPI-80抗原に対する抗体を同時に用いることにより,CD34+/−HSCsを単一細胞レベルまで純化可能な超高度純化法を開発した。本法を用いる単一細胞レベルでの解析結果に基づいて,CD34−HSCの新たな分化モデルを提唱している。本総説では,ヒトCB由来の未分化CD34+/−HSCsの幹細胞特性について最新の知見を紹介する。