臨床血液
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46 (EL3-6D)
血友病遺伝子治療開発の現状と展望
大森 司
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2018 年 59 巻 10 号 p. 2238-2246

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抄録

血友病は血液凝固第VIII因子,または第IX因子の遺伝子異常による先天性出血性疾患である。血友病は単一の遺伝子異常による疾患であり,血中凝固因子の治療域に幅があるため,遺伝子治療のよい対象である。遺伝子治療は,治療に用いられる凝固因子製剤投与の必要性がなくなるため,次世代の治療として患者・家族から大きな期待が寄せられている。既に,欧米ではアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いた複数の臨床試験が開始され,大きな成果が挙げられている。最近では,搭載遺伝子配列やAAVの血清型の工夫で,さらに治療効果が改善しており,まさに疾患の治癒“Cure”が可能なレベルに到達している。一方,AAVベクターの弱点として,1)抗AAVカプシド中和抗体の存在,2)CD8 T細胞による細胞免疫による肝障害,等が挙げられる。今後は,幅広い血友病患者に適応となる技術の開発,ならびに長期安全性を観察する体制が必須である。

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© 2018 一般社団法人 日本血液学会
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