臨床血液
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48 (EL3-4D)
重症熱性血小板減少症候群の疫学,病態および特異的治療・予防法の開発
西條 政幸
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2018 年 59 巻 10 号 p. 2255-2259

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抄録

重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome, SFTS)は新規ブニヤウイルス(SFTSウイルス,SFTSV)による感染症として,2011年に中国の研究者らにより報告された。その報告によるとSFTSは中国の河南省,湖北省,山東省,黒竜江省等の山岳地帯の住民の間で認められ,マダニ(フタトゲチマダニ)が媒介し,発熱,消化器症状が出現し,さらに末梢血液検査で白血球減少と血小板減少が認められる,などの特徴を有する。2012年秋に,日本で海外渡航歴のない女性(50歳代)が多臓器不全,消化管出血,血球貪食症候群で死亡し,その患者がSFTSに罹患していたことが,後方視的明らかにされた。それにより日本でもSFTSが流行していることが明らかにされ,さらに韓国でもSFTSが流行していることも報告された。日本,韓国,中国以外の国でSFTS発生(流行)は報告されていない。現時点ではSFTSは東アジアで流行している感染症である。日本でSFTS流行が確認されてから約6年が経過した。日本では毎年40~100人の患者が国立感染症研究所に報告され,多くは西日本で発生している。SFTSの致命率は約20%と極めて高く,その高い致命率の背景には,SFTS患者では多臓器不全,血液凝固障害,血球貪食症候群等の病態がSFTSV感染によって惹起されていることが挙げられる。動物感染モデルを用いた研究で抗ウイルス薬ファビピラビルがSFTSに対する特異的治療薬として有効である可能性が示唆される成績が発表された。また,ワクチン開発も期待される。SFTS流行がこれからも続くことから,特異的な治療法,ワクチン等による予防法の開発が期待される。

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© 2018 一般社団法人 日本血液学会
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