2018 年 59 巻 12 号 p. 2567-2573
芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)は皮膚病変を主体とし,しばしば骨髄病変,白血化を伴う稀な疾患である。形質細胞様樹状細胞の前駆細胞を正常カウンターパートとするが,造血幹細胞を起源とすることが報告されている。BPDCN症例の10~20%に慢性骨髄単球性白血病(CMML)を代表とする他の血液疾患を合併することが知られる。BPDCNおよびCMMLは,いずれもエピゲノム調節因子をコードする遺伝子の異常が高頻度にみられることが報告されている。CMMLに対しては,エピゲノム調節薬であるアザシチジン治療が行われているが,BPDCNに対するアザシチジン治療は少数例の症例報告がなされているのみである。本症例は67歳男性,皮疹で発症し,皮膚腫瘤生検および骨髄生検によりBPDCNと診断した。化学療法によりBPDCNは消失したが,CMMLを発症した。そこで,アザシチジン治療を行い,clinical benefitが得られた。しかしながら,皮疹と骨髄浸潤および椎体病変を認め,BPDCNの再燃と診断した。BPDCNおよびCMMLは,いずれもTET2変異を2種類ずつ認め,このうち1種類は両方の腫瘍に共通して認められた。本症例はBPDCNとCMMLを合併し,アザシチジンを投与した貴重な1例として報告する。