2018 年 59 巻 6 号 p. 682-687
Human parvovirus B19(HPV B19)は血球貪食症候群(HLH)の原因として知られている。成人の遺伝性球状赤血球症(HS)患者のHPV B19によるHLHを経験した。患者は35歳女性。発熱,下痢を発症し,検査で重度の汎血球減少,中性脂肪・フェリチン高値,末梢血の目視像に球状赤血球を認めた。末梢血のHPV B19の増加,骨髄検査での血球貪食像により,HS患者のHPV B19によるHLHと診断した。これらの症状は保存的加療,輸血により1週間程で改善を認めたが,新たに心不全症状,心エコーでびまん性の壁運動低下を認め,HPV B19のウイルス性心筋炎の合併と診断した。利尿薬による保存的加療で心不全症状は2週間程で改善した。成人のHS患者のHPV B19は稀にHLHを合併し重症化するが保存的加療で改善しうる。しかし,心筋炎の合併を生じる可能性があり,HLH改善後も注意深い経過観察が求められる。