臨床血液
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特集:臨床血液学 ―最新情報と今後の展望2018 (骨髄系疾患)―
急性前骨髄球性白血病:診療最前線
麻生 範雄
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ジャーナル 認証あり

2018 年 59 巻 6 号 p. 725-734

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抄録

急性前骨髄球性白血病(APL)はt(15;17)由来のPML-RARα融合タンパクによるRARαとPMLの作用の阻害によって発症する。APLの治療は,PML-RARα融合タンパクに対する分子標的治療薬トレチノイン(ATRA)と亜ヒ酸(ATO)により飛躍的に改善した。ATRAとATOはそれぞれRARαとPMLへ結合してPML-RARαを変性し,細胞分化を誘導する。ATRAと化学療法により未治療APLの90%以上に寛解が得られ,20~30%再発するが,全生存率は80%前後が期待される。しかし,病初期の出血による早期死亡,地固め療法時の感染症死,再発および二次がんなどの課題がある。これらの多くは併用する抗がん薬に起因している。欧米ではATRAとATOの併用療法が初発APLの標準治療となりつつある。ATRAとATOの併用療法においてもAPL分化症候群や治療前白血球10×109/l以上の高リスク群の治療などの課題が残されている。

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© 2018 一般社団法人 日本血液学会
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