2019 年 60 巻 5 号 p. 468-474
全ての血液細胞の祖である造血幹細胞は特定の微小環境であるニッチに存在し,細やかな制御を受け活動している。これまでの研究により,骨髄の内外の細胞がニッチを構成する細胞であることが報告されており,最近の研究では,骨髄の中の血管領域に存在する細胞群に注目が集まっている。骨髄イメージング技術や遺伝子改変マウス等の実験手法の進歩により,各ニッチ細胞からのニッチファクターの除去が可能となり,ニッチ機能の詳細な解析が可能になってきた。本稿では,骨髄内のニッチ細胞の中でもとりわけ血管領域に注目し,ニッチ研究の最近の進行を紹介し,徐々に明らかになりつつある血管性ニッチ細胞群による複雑な造血幹細胞制御機構について考察する。