2019 年 60 巻 5 号 p. 475-479
血友病Aの治療の原則は第VIII因子製剤の定期補充療法であり,血友病性関節症の発症が抑制され,QOL向上に大きく貢献している。一方,製剤の頻回の経静脈内投与,血管アクセス,製剤投与により出現する同種抗体(インヒビター)等が現在の血友病医療の重大な課題である。これらを克服するため,新しい概念として非凝固因子治療薬が開発されてきた。Bispecific抗体(emicizumab)は,抗原部位の片方に第IX因子,もう片方に第X因子が結合して活性型第VIII因子補因子機能を代替する。臨床試験では重症血友病Aインヒビター患者の週1回皮下投与により著明な出血抑制効果を示し,2018年3月に本邦で認可された(Hemlibra®)。現在,本邦で多くの先天性血友病Aインヒビター患者が定期投与されている。一方,バイパス止血製剤との併用による血栓症発症,止血モニタリング,周術期止血管理など,多くの課題が挙げられており,今後,症例を集積していくことが重要である。