臨床血液
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症例報告
尿崩症を契機に発症し中枢神経病変のコントロールが困難であったErdheim-Chester病
山本 聡笠原 郁美山口 圭介坂井 俊哉和田 典男
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2020 年 61 巻 10 号 p. 1476-1481

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抄録

症例は58歳女性。倦怠感,下肢の疼痛,両側上眼瞼の黄色腫,発熱,多尿,意識障害にて受診し,中枢性尿崩症を認めた。大動脈や腎周囲の軟部組織の肥厚,水腎症,間質性肺炎,下肢の骨硬化性病変を認め,頭蓋内に多発性の硬膜病変を認めた。皮膚生検,骨髄生検にてErdheim-Chester病と診断した。プレドニゾロン30 mg/dayの投与の後,Interferon-α 6 mIU,週3回の投与にて血管周囲の軟部組織は縮小傾向となったが,頭蓋内出血を認め中枢神経病変には無効であった。Tocilizumabの投与にて臨床症状の改善を認めたが,開始6ヶ月後には,水頭症を呈した。開頭手術にて腫瘍の減少を図った後,cladribineの投与を行ったが,一過性の効果に留まり,診断24ヶ月後に原病の悪化により死亡した。中枢神経病変を有するErdheim-Chester病に対しては,新たな治療戦略が必要と考えられる。

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© 2020 一般社団法人 日本血液学会
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