2020 年 61 巻 5 号 p. 503-509
悪性リンパ腫は多種の病型からなる不均一な疾患群である。これまで主に形態や免疫形質をもとに分類がなされてきたが,近年次世代シーケンス技術の開発により各病型において特徴的な遺伝子異常のデータが蓄積されつつある。2017年に改定されたWHO分類でも,MYCおよびBCL2および/あるいはBCL6再構成を伴うhigh-grade B-cell lymphomaが新たに定義され,各病型に特徴的な遺伝子異常が多数記載されている。また,予後予測因子に遺伝子異常を組み入れることで予後予測が改善したとの報告があり,遺伝子異常を標的とする薬剤の開発も進められている。このように,悪性リンパ腫における遺伝子検査は,診断,予後予測,治療選択において重要性が示されている。本稿では,近年のゲノム検査の進歩や悪性リンパ腫のゲノム異常の意義,そして悪性リンパ腫の代表的な病型で明らかになっているゲノム異常について解説する。