2021 年 62 巻 7 号 p. 751-759
わが国におけるHTLV-1キャリアの数は,献血における抗HTLV-1抗体陽性者数から推定されており,最新の調査では約82万人と推定されている。感染予防対策の中心になっているのは妊婦の抗HTLV-1抗体スクリーニングと抗体陽性授乳婦に対する授乳指導である。年間約1,200人が抗体陽性妊婦と診断され,おもに人工乳哺育の指導がなされている。しかし,母乳の授乳ができなかったことに対する心のケア,キャリアと判明したことに対する相談指導体制が不十分であり,拠点施設の選定と地域医療機関,保健所などのネットワークの構築が望まれる。ATL発症ハイリスクキャリアの同定は重要な課題であり,JSPFADなどのレジストリー研究をベースにフローサイトメトリーによる検討,マルチオミックス解析などのデータが蓄積されつつある。今後これらのハイリスクキャリアに対するpre-emptiveな治療に有効な薬剤の開発が急務である。