2021 年 62 巻 7 号 p. 790-800
血友病患者のインヒビター発生要因として,さまざまな患者関連および治療関連因子が欧米諸国の先行調査研究により明らかにされつつあるが,日本の血友病患者における治療とインヒビター発生の実態については不明であった。そこで,2008年にJ-HIS(Japan Hemophilia Inhibitor Study)研究班が発足し,日本のインヒビター発生血友病患者の実態に関する後方視的研究(J-HIS1)に続いて,新規診断された血友病患者の前方視的追跡調査によるインヒビター発生要因の検討と患者データベース構築を目的とした多施設共同研究(J-HIS2)が開始された。約10年間に及ぶ研究の結果,日本の血友病患者のインヒビター発生は25製剤曝露日までに集中し,重症血友病Aでは,null型F8遺伝子変異および頭蓋内出血がインヒビター発生リスクを高め,早期の定期補充療法導入がリスクを低減することが判明した。