2022 年 63 巻 4 号 p. 302-307
固形がん分野ではおもに標準治療が終了した患者を対象に,2つの遺伝子パネル検査が保険償還されている。一方で,造血器腫瘍に特化した遺伝子パネル検査は未だ存在せず,早期の臨床実装が期待されている。固形がんと造血器腫瘍では,変異をきたす遺伝子の種類が異なるだけでなく,検査の使用用途が異なる。具体的には,固形がん分野では遺伝子パネル検査が分子標的薬の適応を決める目的でのみ使用されるのに対し,造血器分野では検査から得られるゲノム情報が「治療法選択」に加えて,「診断」「予後予測」において有用である。本稿では2021年の日本血液学会年次総会「血液内科におけるゲノム医療の現状と課題」シンポジウムにおいて,議論された遺伝子パネル検査の「治療法選択」における臨床的有用性に関して概説する。