2022 年 63 巻 6 号 p. 555-560
造血幹細胞の代謝動態は細胞運命ならびに分化を規定する。造血幹細胞の幹細胞性を維持するには,解糖系,ミトコンドリアによるATP産生のバランスを適切に保つ必要がある。従来の細胞内ATP測定では大量の細胞を融解した後にスナップショット解析が行われ,単一細胞レベルかつ時空間的な情報を喪失していた。そこで我々は“GO-ATeam2”と呼ばれる,フェルスター蛍光共鳴エネルギー移動の原理を用いた細胞内ATP濃度バイオセンサーのノックインマウスを用い,生きた造血幹前駆細胞におけるATP濃度測定技術を開発した。本稿では造血幹細胞におけるこれまでの代謝学的な理解に加え,GO-ATeam2を用いることで明らかとなった代謝依存性の理解や今後の新たな代謝測定技術の展望について概説する。