2023 年 64 巻 2 号 p. 107-112
40代女性。AML再発に対し血縁者間HLA半合致移植を施行。移植後day59に食道狭窄症を発症した。GVHDと診断し免疫抑制療法中は定期的な食道拡張術で安定していたが,AML再々発に伴い免疫抑制剤を中止すると食道狭窄の増悪を認めた。食道粘膜は易出血性・易剥離性であり,生検組織で剥脱した重層扁平上皮と上皮下の肉芽組織との離開を認めた。蛍光抗体直接法で基底膜部へのIgGとIgAの線状沈着を認め,蛍光抗体間接法ではIgG陰性,IgAが表皮側で陽性,BP180のC末端部位リコンビナント蛋白を用いた免疫ブロット法ではIgG,IgAが陽性であり,抗BP180型粘膜類天疱瘡と診断した。同種移植後の類天疱瘡はGVHDにより表皮の基底細胞が傷害され基底膜部蛋白が露出し,抗原提示されることにより生じると考えられている。本症例も同様の機序と考えられ,典型的なGVHDと異なる症例では詳細な組織診断が重要である。