2024 年 65 巻 9 号 p. 1019-1024
成人T細胞白血病リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma, ATLL)はhuman T-cell leukemia virus type-1(HTLV-1)感染を原因とする難治性の末梢性T細胞腫瘍である。ATLLの発症にはHTLV-1由来のウイルスタンパク質であるTaxやHBZとともに,体細胞遺伝子異常の蓄積が重要な役割を果たしており,特にT細胞受容体/NF-κB経路や免疫関連分子の変異が特徴的であり,予後にも関連している。近年では,単一細胞解析によってHTLV-1感染前腫瘍細胞の表現型やATLL細胞や免疫微小環境における不均一性も明らかになっている。本総説では,こうしたゲノム,エピゲノム,遺伝子発現研究における最近の進歩に焦点を当ててATLL分子病態を概説する。これらの知見は,病態理解を深めるだけでなく,診断や治療戦略にも重要な示唆を与えるものである。