今後の国産材研究に対する議論のために木材学分野における研究動向を述べ、林学とのリンクの再構築への糸口を考察した。木材学の研究対象と手法は多様で、国産材を意識した研究比率は最近増加傾向が著しいが、現状では20%に満たない。この増加は国内の建築法規および木材供給施策の動向を背景とし、1995年の阪神・淡路大震災後、それが加速したものといえる。国産材研究は材質、強度、乾燥部門で高比率を占める。大部分は人工造林スギに関するもので、行政的要請であるとともに、科学的興味を誘うような材料的性質が示されたことによる。また、この利用技術の開発のためには木材学上の種々の知見の統合が重要である。木材学と林学の接点は「材質・育種」「木材流通」という2つの異なった研究分野を介したつながりになるのではないか、と考える。とくに「木材流通」については一般消費者をターゲットに「設計施工業者」までを含んだ総合的な対応が必要である。