2005 年 58 巻 1 号 p. 1-19
構造別住宅建築需要体系の推定を行い、これに基づいて、炭素税の導入が木造住宅建築需要に与える影響の予測を試みた。構造別の住宅建築需要体系を線形近似AIDSを用いてモデル化し、資料に建築着工統計の居住用建築物構造別着工床面積及び工事費予定額を用い、42都道府県別に24年間の年次時系列データを用いてモデルの推定を行った。その結果、多くの都道府県に共通して、木造住宅建築需要は価格に対して非弾力的で、支出への弾力性はほぼ1であることが分かった。次にこの推定結果を用いて、炭素税導入の影響を予測した。1997年時点で3~30千円/Ctの炭素税が製造時炭素放出量に課税されたと想定したシミュレーションを行った。炭素税の影響は、炭素税導入に対して家計が住宅建築への支出をどの程度変化させるかに依存するが、いずれにしろ、木造住宅建築の需要増は小さいものと見込まれた。