抄録
不在村所有者の森林管理上の問題点が指摘される中で、過疎高齢化した山村地域では相続に伴う自然発生的不在村所有化が危惧される。本研究では在村者世帯の後継者を主対象として、この不在村所有化を質的・量的に分析し、今後の森林管理問題との関連性を明らかにした。その結果、後継者の「森林管理力」や「帰村予定」は、"居住地"やそれと相関関係にある"帰村頻度"によって規定されていることが明らかになった。「森林管理力」は「遠隔後継者」ほど低く、逆に「帰村予定」は「遠隔後継者」の方が帰村を予定している割合が高い傾向がみられた。総合すると5割から8割程度の後継者の帰村意思が確認できたが、帰村を予定している後継者でも「遠隔後継者」に多くみられるように、森林管理力は低く管理をおこなっていくには困難である。また、帰村しない後継者は管理力や物理的にも問題があり、村に通って管理できるのは極めて少数であることが明らかになった。