林業経済
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アメリカの協働型自然資源管理(原著論文)(シリーズ ゾーニングを考える)
生物多様性保全と森林ガバナンスの行方
及川 敬貴
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2010 年 63 巻 5 号 p. 1-23

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抄録

本稿は、カリフォルニア州北部の小さな森林コミュニティにおける協働型自然資源管理の試みと、それが引き起こした全国レベルでの政治論争の経緯を考察したものである。その結果、(1)資源管理関連の意思決定過程への参加の機会の充実が、協働の発生の遠因となったことや、(2)協働を通じて、既存の制度枠組に囚われない斬新な政策イノベーションや主体間の信頼感が醸成される一方で、(3)地域での協働にもとづく自然資源管理の実践が、広域的な環境保全(生物多様性保全)や国有財産(国有林)のガバナンスをめぐる新たな紛争を生み出していること等が明らかになった。近年のわが国の法律でも協働型自然資源管理の導入がうたわれているが(例:生物多様性基本法21条1項)、その実践に当たっては、資源管理決定への参加の機会を充実させることはもちろん、この資源管理アプローチが「紛争の発生を許容する動的な秩序形成過程」であることを認識する必要がある。

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© 2010 一般財団法人 林業経済研究所
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