林業経済
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違法伐採の構造の変容と地元住民の役割の変化(原著論文)(平成18年度 林業経済研究所研究奨励事業(瀧奨励金)助成研究)
インドネシア、グヌンパルン国立公園を事例として
御田 成顕
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2015 年 68 巻 7 号 p. 1-17

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抄録

インドネシア、西カリマンタン州に位置するグヌンパルン国立公園を事例とし、1990年代末期から2008年にかけての、(1)違法伐採の利害関係者内における地域住民の位置づけとその変容、および(2)地域住民が違法伐採に従事する動機となった内部要因と外部要因とを明らかにし、地域住民が従事する違法伐採の対応のあり方を検討した。違法伐採が拡大した1990年代末期から2000年代初頭にかけて、地元住民は伐採労働力としての役割を担うにすぎなかったが、2007年以降、地元住民は違法伐採を主導する役割を果たすようになった。2007年以降の違法伐採を、林内での伐採活動と、集落内での搬出活動とに分類し、地元住民がそれぞれの活動に従事する動機を検討した。その結果、伐採活動に従事する世帯は集落内で相対的に経済的に豊かであった。しかし、現金収入の多くをゴムに依存していることから、ゴム価格の急落という国際市場に対する生計構造の脆弱性が伐採活動の参加動機となっていると考えられた。搬出活動は、世帯内の男性労働力が多い世帯が従事する傾向が見られたことから、雇用機会に対する欲求が動機となっていることが示唆された。一方、伐採活動および搬出活動に従事しない世帯は、農業以外の収入を有する割合が相対的に高かった。これらのことから、調査対象集落における違法伐採の抑止にあたり、ゴム以外の農作物の導入を通じた市場リスクの分散を検討することが求められる。以上より、今後の違法伐採対策においては、森林法執行の強化を通じた違法伐採対策だけではなく、本研究の事例で示唆されたように、違法伐採に代わる安定的な収入機会の創出が必要である。

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© 2015 一般財団法人 林業経済研究所
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