林業経済
Online ISSN : 2189-6801
Print ISSN : 0388-8614
ISSN-L : 0388-8614
入会林野研究の成果と今後の展望(論文)(創立70周年記念特集 これからの林業経済学・林政学研究)
山下 詠子
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 70 巻 9 号 p. 1-21

詳細
抄録

本稿では入会林野に関する研究レビューを行い、当該分野における研究の成果と課題を抽出し、今後を展望した。政策としては、入会林野近代化法と入会林野整備事業が現在も継続しているが、同事業はほぼ終焉を迎え、一方で全国に3,000近くある生産森林組合では解散が増えている。改正地方自治法に基づく認可地縁団体の入会林野への影響も様々に広がりつつある。一方、入会集団においては混住化や過疎化を背景に、あるいは所有名義が則る法人制度の影響を受けて、入会慣習(権利の得喪)には変容も見られる。また、近年は財産区をめぐる紛争には新たな構図ができつつある。入会林野政策のあり方を模索するためには、入会林野のマクロ分析の視点に立つ研究や、現在進行中の様々な森林政策との接点を求める研究が必要と考える。また、様々な変化に入会集団が対応する中で多様な入会林野が生まれたことを踏まえると、改めて入会林野政策とは何を目指したらよいのかという課題に向き合う必要がある。

著者関連情報
© 2017 一般財団法人 林業経済研究所
前の記事 次の記事
feedback
Top