2024 年 30 巻 p. 537-542
本研究では雨庭の流域治水政策への展開を目指し,熊本県内にて雨庭を実際に建設・試行し,流入・流出量等の観測による検証を行った.令和2年7月豪雨・球磨川水害時の降雨を対象に,流出量を50%,ピーク流出量を30%低減することを目標とし,雨庭の面積を約35m2,深さを60cmと設定した.約17ヶ月間の観測では,期間中90%以上の流出を抑え,大雨時の流出低減効果やピーク時間の遅延効果を確認した.雨庭の土壌浸透能は季節変動および上昇傾向がみられたが,目標達成にはさらなる浸透能の向上が必要である.浸透現象は雨庭の流出抑制効果が持続的に発揮されるために重要であることを示した.