抄録
本研究では,競争状況とフロー感覚に着目し,競争中に優勢または劣勢といった競争状況を認知した際,どちらの状況がその後の課題におけるフロー感覚とそれに伴うパフォーマンスを促進させるのかを検討することを目的とした.実験参加者は,2 人1 組でのシーケンスタッピング課題による競争を実施した.TASK1 で30 秒間の課題を行った後,両者に結果を開示し,自身が優勢であるか劣勢であるかを認知させた.TASK2 では,TASK1 の結果を持ち越した上で再度30 秒間の課題を行なった.パフォーマンスの指標にはタッピングの回数とミスの回数を,フロー感覚の評価にはSport Flow Scale を用いてTASK1,TASK2 の比較を行った.その結果,パフォーマンス指標では,競争状況を優勢と認知しても劣勢と認知してもTASK1 からTASK2 にかけてタッピング回数が有意に増加した.しかし,フロー感覚においては,状況を劣勢と認知した実験参加者のみ,TASK1 からTASK2 にかけてフロー得点が有意に増加した.このことから,競争場面において,対戦相手と同等のパフォーマンスを発揮したとしても,その状況によって得られるフロー感覚は異なり,状況を劣勢と認知した方がより課題に対するフロー感覚を獲得することが示唆された.