大豆のリビングマルチ栽培において,マルチとして利用される小麦や大麦が,生育初期の大豆の根系形成にどのように影響するかを染色法により検討した.大麦をマルチとして想定した処理区では,大豆のみを栽培した処理区と比較して,大豆の地上部乾物重,総根長,総根重ともに抑制された.小麦をマルチとして想定した処理区では,大豆の地上部乾物重は,リビングマルチの影響を受けておらず,総根長および総根重のみが抑制されていた.また,小麦に比べて大麦の方が,より大豆の根域に侵入していることが示され,リビングマルチによって大豆の根系拡大が抑制されることが明らかになった.大豆の根系形成がリビングマルチの影響を受ける一方で,麦類の根系形成は隣接作物の影響を受けないことが示された.これらの結果から,麦類を利用したリビングマルチ栽培において播種直後から地下部では競合関係にあり,大麦が大豆の根域に侵入し,より強く大豆の生育を抑制していると考えられた.