根の研究
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水素の安定同位体自然存在比から評価した植物が利用する水資源の由来
関谷 信人矢野 勝也
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2002 年 11 巻 2 号 p. 35-42

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抄録

自然界に存在する水の分子はほとんどがH2Oであるが, 極わずかにD2OやDHOも含んでいる. D2O・DHO・H2Oは反応速度や拡散速度が異なる結果, 自然界の水に含まれる水素の安定同位体自然存在比 (δD値: 試料中D/Hと標準試料中D/Hのズレを千分率で表す) が場所や状態によって大きく変動する. これを同位体効果という. 一部の塩生植物を除いて, 土壌-根-導管 (蒸発散や代謝の影響を受けない部位) の過程に同位体効果は発生しないため, 導管に含まれる水のδD値はその植物が吸収している水資源のδD値を反映する. したがって, 導管水δD値を計測すれば, その植物がどの水資源にどの程度依存しているのかを推定することが可能であり, 過去10年ほどの間に, 従来の手法では明確にすることのできなかった事実が徐々に明らかになってきた. 本稿では, それらの報告を紹介するとともに, 今後の研究の可能性についても触れる.

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