セイヨウワサビ (Armoracia rusticana) の毛状根クローンAR182株とAR450株を用いて, 植物ホルモン非存在下での根組織からの不定芽分化能について比較した. その結果, AR450株からは多数の不定芽が分化し, 植物体へと再生したが, AR182株からは全く不定芽が分化しなかった. 次いで, 不定芽分化におよぼすオーキシンとサイトカイニンの影響を比較した. ナフタレン酢酸 (NAA) とベンジルアデニン (BA) を, 最終濃度10-7-10-5Mとなるように添加したLS培地で培養したところ, AR450株では, 特に, LS(10-6M NAA) 培地およびLS(10-7M NAA, 10-7M BA) 培地で, 置床部の根組織から顕著な不定芽の分化と伸長がみられた. 一方, AR182株では, オーキシンやサイトカイニンを添加したLS培地でも, 不定芽の分化は全くみられなかった. AR182株は不定芽分化能が極度に抑制された毛状根クローンであることがわかった.