根の研究
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熱帯樹木の根の形態とその生態学的意義
山田 俊弘
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2005 年 14 巻 3 号 p. 91-97

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抄録

熱帯樹木の多くが, 土壌的もしくは地形的生息地に対する嗜好性を持っている. しかし, 熱帯樹木がその好適な生息地に対して, どのような形態学的, 生理学的適応をしているかについては明らかにされていない. 熱帯樹木の根系を種間で比べてみると, 細根を地表付近にしか配置しない種と, 地中深くまで配置させる種がいることがわかった. 熱帯雨林では, 土壌養分は地表付近に集中して分布し, 反対に土壌水分は地表付近で少なく, 地中深くなるにつれて増加していく傾向がある. 熱帯樹種間の根系の形態の差は, 養分吸収のために細根を地表付近に配置させる戦略と, 水分吸収のために細根を地中深くにまで配置させる戦略の間のトレードオフである程度説明できるようである. 細根の配置と対応した根系の形態が養分・水分吸収戦略と深く関係していると考えるならば, その種間差は土壌環境への適応性とそこでの競争力の種間差を生み出し, ひいては観察されたような土壌的もしくは地形的生息地と対応した種の分布パターンを生み出している可能性がある.

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