根の研究
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黒ボク土畑における陸稲干害に対する不耕起栽培と深根化による軽減効果
辻 博之
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2000 年 9 巻 1 号 p. 11-15

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抄録

黒ボク土畑における不耕起栽培と深根化による陸稲の干害軽減効果について検討した. 1996年と1997年に茨城県つくば市の淡色黒ボク土の普通畑に, ロータリ耕 (深さ15cm) 区および不耕起区, 灌水区および無灌水区を設けて陸稲 (品種: ハタキヌモチ; 1996年のみ栽培, ユメノハタモチ; 1996, 1997両年とも栽培) を栽培した. 播種日は, 1996年は5月17日, 1997年は5月16日と5月19日の2回とした. 両年ともに8月の降水量が少なく無灌水区では干ばつに遭遇した. 不耕起区ではロータリ耕区に比べて, 陸稲の初期生育が旺盛となり, 出穂が早期化し, 深さ0~20cmおよび30cmより深層の根長密度が増加し, 灌水区においては精籾重が有意に増加した. 干ばつが比較的軽度な時期において, 陸稲に消費された水分は深根性品種のユメノハタモチおよび不耕起区で増加したと考えられ, それが陸稲の生育を旺盛にしたものと推察された. しかし, 葉の著しい萎ちょうは耕起法および品種にかかわらず同時期に観察され, その時期より出穂が遅れるほど, 灌水区に対する無灌水区の相対収量が低下する傾向が示された. 以上より, 陸稲の干害回避と軽減には出穂の早期化がより直接的に有効であり, 不耕起栽培および深根化等による土壌水分供給の増加は出穂を比較的早めて干害を回避させる場合があるが, 強度の乾燥ストレス遭遇後に出穂した陸稲に対する干害軽減効果は小さいと判断された.

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