根の研究
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トウモロコシ根系が発揮する可塑性の窒素獲得における意義
田中 佐知子山内 章矢野 勝也飯嶋 盛雄巽 二郎
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キーワード: 可塑性, 根系, 窒素, 不均一系
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2000 年 9 巻 4 号 p. 167-171

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抄録

本研究では, 根域内の窒素の不均一な分布に対して根系が可塑的な反応を示したことによる窒素獲得効率の変化を定量的に評価しようとした. 直径3cm, 長さ10cmの円筒に0.5%の寒天を充填し, これらの2本を厚さ2mmのワックス層を挟んで上下に接着し, 根は通過するが養水分は移動しない装置を作成した. 上層は養分を含まず, この下層に窒素を含まないもの (NF区), 2mM-NO3- (NO区), 2mM-NH4+ (NH区) をそれぞれ含むものの3処理区を用意した. 上層の寒天の表面にトウモロコシを播種し, 人工気象室内で10日間栽培した. NO区での全根長に対する下層に含まれる根長の比は, NF区のそれと比べて1.76倍に, NH区では1.59倍に増加した. そこで, このように可塑性を発揮した実際の根系と, 窒素の局在に対して可塑性を発揮できなかったと想定した仮想根系との間で窒素獲得効率を比較した. このとき, 全根長および単位根長当たりの窒素吸収量は両根系間で等しいと仮定した. その結果, 実際の根系は仮想根系と比べて, 窒素獲得量がNO区では1.77倍, NH区では1.63倍大きいと計算された. 以上の結果を, 窒素が下層に局在した場合, 根系が可塑性を発揮して窒素獲得のために有利な根系を形成したと解釈した.

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