老年社会科学
Online ISSN : 2435-1717
Print ISSN : 0388-2446
原著論文
日本人における「知恵」の概念
―― 中高年世代を対象とした面接調査 ――
春日 彩花佐藤 眞一Masami Takahashi
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2020 年 41 巻 4 号 p. 379-390

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抄録

 本研究では,日本人の「知恵」の構成要素を明らかにすることを目的として,15人の中高年世代を対象に,「知恵」にかかわる側面を問う半構造化面接を行った.分析の結果,【具体的に問題を操作する能力】【方針を設定する力】【内的可変性】【周囲との調和性】【信念に基づく生き方】という5つのカテゴリーが抽出され,各カテゴリーには2〜8個のサブカテゴリーが設定された.海外の先行研究と比較すると,日本人の「知恵」には,調和性を重視する特徴(規範に基づいた態度,「おかげ」の意識,謙虚な態度)と,自分の生き方を見定めて実行する力(やり遂げる力,強い意志に基づく実行力,人生の指針の確信)を重視する特徴があることが示唆された.これらには,日本の風土やアジアに共通の価値観,日本人の道徳観が関与していると推察される.今後日本で知恵研究を進めるにあたり,こうした文化的特徴を踏まえて検討していく必要があると考えられる.

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© 2020 日本老年社会科学会
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