宗教研究
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信仰と歴史の問題 : キェルケゴールの立場
スザ ドミンゴス
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2005 年 79 巻 1 号 p. 1-24

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抄録
キリスト教の啓示には異なる領域に属する二つの側面、すなわち歴史的真理と宗教的真理が含まれる。この二つの比較し得ない領域から、信仰と歴史の問題が生じてくる。すなわち神は歴史的現実として現れたが、それは直接的に知られるものではないし、歴史的知識から証明できない。では、いかに歴史的事実に基づいて宗教的真理に達し得るのか。本稿は、この根本問題に関するキェルケゴールの見解を考察する。キェルケゴールによれば、神が特定の時に人間の姿として現れたという出来事は、単純な歴史的出来事ではなく、絶対的事実である。すなわち、歴史的要素と永遠的要素とを含んでいる。イエスという人物が存在したことは歴史的探究によって証明されるが、歴史的探究からは、イエスが神であるという結論は導き出せない。この点に関する歴史的不確実性は、信仰によってのみ乗り越えられる。しかし、信仰によって得られた確実性は主体的なものであり、客観的なものではない。個人がこの事実を信ずることを決意するとき、それが誤謬であるかもしれない危険を冒す。キェルケゴールにとって信仰とは、まさに危険を冒しながら、しかも信じることである。
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© 2005 日本宗教学会
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